今回は長野県に伝わるお盆の風習「かんば焼き」をご紹介いたします。
かんばとは?
お盆の風物詩「迎え火」と「送り火」。
ご先祖様の霊が家とあの世とを迷わずに行き来できるよう、目印として火を焚く風習です。
一般的には「おがら(麻の茎を剥いで乾燥させたもの)」や「稲わら」で火を焚くのですが、
長野県(特に北信の方)では、「かんば」と呼ばれる白樺(しらかば)の皮を使います。
これが「かんば」です。
かんば焼きの風習がある地域では、7月下旬頃からスーパーやホームセンターに、かんばが大量に並びます。
長野県に引っ越してきた人は、これが何なのか分からず、みんな驚くそうです。
かんばの内側はこんな感じです。まんま木の皮ですね。
これが白樺の木です。白樺は「しらかんば」とも呼ばれ、これがかんばの由来になっています。
ちなみに白樺は長野県の県木でもあります。県内では白樺高原や八千穂高原などで、美しい白樺林を見ることができます。
かんばの焚き方
かんばはハサミなどで5cmほどに切って使います。
かんばは油分を多く含むため、真っ黒な煙を出しながらメラメラと燃えあがります。
この煙の色と独特な匂いを嗅ぐと、今年もお盆が来たなぁと思います。
かんばは主にお墓と家の玄関の前で焚きます。
かんばの灯りで、お墓から家までの道筋をご先祖様に示すわけですね。(送り火の場合は逆に玄関→お墓の順番で焚きます)
かんばを焚く時には歌をうたいます。迎え火の時は「じぃ〜さんもばぁ〜さんも、この灯りで〜お〜いでおいで」と、送り火の時は「じぃ〜さんもばぁ〜さんも、この灯りで〜おかえりおかえり」と歌います。(歌は地域によって微妙に異なります)
お墓まで行かずに、庭でかんば焼きを済ませる家庭も多いようです。また、集合住宅や住宅街など、火を焚くことが難しい家庭では、かんば焼きの代わりに盆提灯を灯すこともあるそうです。
かんばが燃え尽きたのを確認したら、火事防止のために水をかけます。
使い終わったかんばは、燃えるゴミとして処分するか、庭や畑に埋めます。(木の皮なので、土の中で自然分解されます)
かんばを燃やした地面には黒い跡が残ります。水をかけた後にブラシなどで磨く方もいますが、放っておいても雨で自然に落ちます。
まとめ
今回は長野県のお盆の風習「かんば焼き」を紹介しました。
「迎え火」と「送り火」は他の県でも行われていますが、かんばを使うのは長野県だけです。
お盆という同じ行事の中にも、地域によって様々な違いがあるのが面白いですね。
長野県民がお盆に食べるもの
おまけで、長野県民がお盆に食べるものを紹介いたします。
長野県でお盆に食べる代表的なものといえば、やはり天ぷらです。
長野県では古くから、「天ぷら=ごちそう」というイメージが強く、ご先祖様に豪華なものを食べてもらいたいという思いから、
お盆には、どの家庭でも必ずと言っていいほど、天ぷらが食卓に並びます。
また、長野県の中信・南信地域では、まんじゅうを天ぷらにした「天ぷらまんじゅう」なるものをお盆に食べます。
この地域には、「ご先祖様には珍しいものをお供えする」という風習があり、いつからか天ぷらまんじゅうがお盆の定番になったそうです。
この地域ではお盆が近づくと、天ぷらまんじゅう用の小さいお饅頭がスーパーに並ぶんだとか。
天ぷら以外では、長野県名物のおやきもお盆によく食べられます。お盆ということで、具材はナスが定番です。
長野県では信州おやき協議会によって「おやきを食す日」が1年間で7日定められており、そのひとつが8月14日の「お盆おやきの日」です。
その他には寿司や刺身、そばや漬物、スイカなどをお盆によく食べます。
やはり、豪華なものや長野県ならではの食べ物が多いですね。
ご先祖様を思う気持ちや地域を愛する気持ちの表れなのかなと思います。
当ブログでは今後も、長野県ならではの風習や食べ物を紹介していきます。お楽しみに。
↓後日、長野県に伝わるお盆のお供え物「こりんと」について調査しました。興味のある方はご覧ください。